再生可能エネルギーの発電コスト推移と予測|IRENA報告から読み解くこれから重視される価値とは?
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告
国際再生可能エネルギー機関(IRENA https://www.irena.org/)が2025年6月に発表した報告書『Renewable Power Generation Costs in 2024』によれば、2024年も再生可能エネルギーは、世界で最も費用対効果に優れた新規発電手段としての地位を維持しています。
再エネが単なる環境対策のみならず、経済的合理性においても明確な選択肢であることを改めてデータで裏付けていました。
今回のコラムでは、再エネで今後重視される価値等について、IRENA報告から読み解いてみたいと思います。
再エネ発電コストの価格破壊の経緯
再生可能エネルギーのコスト低下は、2000年代初頭の政策的後押しと技術開発に端を発します。
欧州では固定価格買取制度(FIT)が太陽光や風力の導入を促し、中国は大規模製造によりグローバルな価格破壊を起こしました。
米国も税制優遇や州ごとの義務化により導入を進め、こうした世界的な累積導入量の拡大がスケールメリットと技術革新を加速させた経緯があります。
再エネは依然として最も競争力のある発電手段
報告では、2024年に新たに稼働を開始したユーティリティ規模(大規模発電所)の再エネ発電設備のうち、91%が最も安価な化石燃料発電よりも低い発電コストで電力を供給しています。
これは、単に一部地域の特殊事例ではなく、グローバルな傾向として定着しつつあることを示唆しています。
IRENAが基準とする「均等化発電コスト(LCOE:Levelized Cost of Electricity)」とは、発電設備の建設費、運転維持費、燃料費、除却費などの総コストを、その設備が生涯に供給する電力量で割って算出される単位発電コストであり、電源ごとの経済性を比較する指標として広く用いられています。
再エネの発電コスト。どの発電手段が最安?
報告書内で示された2024年時点の世界加重平均LCOEは、以下のとおりでした。
(括弧内日本円 1米ドル=150円)
- 陸上風力:0.034米ドル/kWh(5.1円/kWh)(世界最安の再エネ電源)
- 太陽光発電(PV):0.043米ドル/kWh(6.45円/kWh )
- 水力発電:0.057米ドル/kWh(8.55円/kWh)
- 洋上風力:0.080米ドル/kWh(アジア平均は0.078米ドル/kWh)(12円/kWh)
このうち、太陽光と風力は依然として急速なコスト低下の恩恵を受けていますが、2023年比で陸上風力は3%、太陽光は0.6%、洋上風力は4%コスト上昇という一時的な反動も見られました。
一方で、地熱発電(−16%)や集光型太陽熱発電(CSP)(−46%)など、一部の再エネ技術では顕著なコスト低下が報告されており、ポートフォリオとしての多様性が経済合理性に寄与しています。
設備コストの低下をけん引する蓄電池コストの低下
2010年から2024年にかけて、設備導入コスト(TIC)は以下のようになりました。
- 太陽光PV: 691米ドル/kW (103,650円)
- 陸上風力:1,041米ドル/kW (156,150円)
- 洋上風力:2,852米ドル/kW (427,800円)
さらに、蓄電池のコストは2010年以降から2024にかけて93%の低下を記録しており、再エネ+蓄電池が経済性をさらに高めています。
中国・インド・ブラジルの先進市場
国別に見ると、陸上風力では中国(0.029米ドル/kWh)とブラジル(0.030米ドル/kWh)が、太陽光では中国(0.033米ドル/kWh)、インド(0.038米ドル/kWh)がいずれも世界平均を下回るLCOEを達成しています。
これらの国々では、サプライチェーンの成熟や施工技術の標準化により、再エネの導入コストが急速に低下していることが背景にあります。
日本における動向と今後の展望
日本においても、2011年の東日本大震災以降、エネルギー安全保障と脱炭素の観点から再エネ政策が強化されました。
2023年にはGX基本方針が策定され、再エネ主力電源化の方針が明記されています。
FITやFIP制度の導入、系統整備、蓄電支援策などを通じて、日本もコスト低減の国際潮流に遅れず歩みを進めてきましたが、依然として導入スピードと柔軟な市場設計に課題が残されています。
今後5年の再エネ導入コストの予測
IRENAは、今後5年間で世界の設備導入コストが以下の水準に達すると予測しています。
- 太陽光PV:388米ドル/kW
- 陸上風力:861米ドル/kW
- 洋上風力:2,316米ドル/kW
一方、短期的には再エネ部材への関税導入や、特に海外製造業の動向といった地政学リスクが、コストへの影響要因として懸念されています。
加えて、再エネの導入加速にともない、系統統合や調整力確保が新たな課題となっており、それらが全体のシステムに影響を与える可能性は否定できません。
太陽光・風力・蓄電池を組み合わせ、さらにデジタル制御を加えた高度な統合型プロジェクトが増加しており経済性と安定供給性の両立や充放電の可視化について、より注目が集まるでしょう。
再エネの価値はコスト低下にとどまらない
IRENAの報告によると、2024年に再エネ導入によって約4,670億米ドルの化石燃料コストが回避されたと推定されています。
これは、再エネが単なる「最安電源」であることにとどまらず、エネルギー安全保障・経済安定・レジリエンス強化という観点でも、極めて重要なインパクトを持つことを示しています。
再生可能エネルギーは、コスト面でも環境面でも、そして地政学的リスクのヘッジ手段としても、確実にエネルギー戦略の中核に位置しつつあります。
今後は「安さ」だけでなく、「価値」の総合化こそが問われる時代になるでしょう。