ループする

「ワット・ビット連携」をわかりやすく解説|再エネとデータセンター統合の要点

「ワット・ビット連携」をわかりやすく解説|再エネとデータセンター統合の要点
目次

「ワット・ビット」とは何か?

2025年、日本のエネルギー政策において大きな転換点となる言葉が登場しました。

それが「ワット・ビット連携」です。

ワット・ビット連携とは、電力(ワット)とデジタル情報(ビット)の緊密な統合を意味し、単なる技術論にとどまらず、再生可能エネルギーの導入拡大やデータセンター立地戦略とも結びつく「エネルギーとデジタルの融合」の取り組みを指します。

社会構造や産業構造を変える可能性を秘め、GX(グリーントランスフォーメーション)の柱の一つともいえるでしょう。

2025年2月に「GX2040ビジョン」で初めて明確に位置付けられ、3月からは「ワット・ビット連携官民懇談会」での議論が始まりました。
その後、6月には政府の「骨太方針2025」や「エネルギー白書2025」に盛り込まれ、わずか数か月で国のエネルギー政策の中枢にまで押し上げられました。

このスピード感は、政府が従来の縦割り行政の枠を超え、省庁横断で本気の取り組みを進めている証拠といえます。

 

なぜ「ワット・ビット」なのか

再エネの普及、データセンター需要の急増、EVの普及や分散電源の拡大により、電力システムは従来以上に複雑化しています。
その制御・最適化には、膨大な情報処理とAIによる予測・分析が不可欠です。

ワットとビットの連携は、スマートメーターやEMSの次なる進化形であり、電力ネットワークと情報ネットワークを双方向に結びつけ、需給調整や系統運用をリアルタイムで最適化する仕組みを指します。
これは「電力のインターネット化」、すなわち「MESH構想」実現への道筋といえます。

※MESH構想とは
参考:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/gx2040/20240723/siryou5.pdf

 

政策の急速な前進

「ワット・ビット連携官民懇談会」には総務省・経産省・資源エネルギー庁が共同で関与し、デジタル庁や環境省も加わるという、省庁横断的な枠組みが整えられました。

ワーキンググループでは、データセンター立地、効率的な電源整備、再エネとの統合などが議論され、短期間で「取りまとめ1.0」が公表されています。
そしてその内容が「骨太方針2025」「エネルギー白書2025」に反映されたことは、かなりのスピード感をもって進められた、と驚きをもって業界内で受け止められています。

 

導入計画と電力会社の戦略

実際にワット・ビット連携を導入していくためには、電力会社を中心に以下のような戦略が描かれています。

1、再エネとデータセンターの一体的立地

  • 再生可能エネルギー電源の開発と同時に、需要家であるデータセンターを近接させる動きを強化しています。
  • 北海道・九州など再エネポテンシャルが高い地域で、データセンター誘致と再エネ整備をセットで進める動きが加速しています

2、需給調整市場への積極参入

  • 蓄電池や仮想発電所(VPP)を組み込み、再エネ出力変動を吸収しながらデータセンターへ安定供給を行います。
  • 電力会社は「発電・販売」から「需給調整サービス提供」へとビジネスモデルを拡大しています。

3、デジタル基盤との統合

  • AIを活用した需給予測や、ブロックチェーンによる分散取引の仕組みを実装し、電力と情報の最適化を進めます。
  • データセンターの負荷制御や空調最適化とも連動し、効率的な統合運用を実現します。

4、地域社会との共創

  • 再エネとデータセンターの一体整備は、雇用創出や地域振興にもつながります。
  • 電力会社は自治体と連携し、スマートシティや脱炭素モデル都市の実現に寄与する計画を描いています。

 

産業構造へのインパクト

ワット・ビット連携は、電力業界にとどまらず、デジタル産業やスマートシティ開発、地域経済のあり方を大きく変えます。

データセンターの電源確保が地域政策と結びつけば、地方分散型の成長モデルが形成されることでしょう。
電力会社は「電気を売る企業」から「データとエネルギーを統合したプラットフォーム企業」への進化が予見されるところです。

 

地政学的含意

エネルギーとデータは国家安全保障の基盤でもあります。
再エネとデータセンターの統合整備は、経済安全保障やデジタル主権とも直結するといえるでしょう。

欧州では「デジタル主権」と「エネルギー転換」が一体で議論され、中国では国家主導で電源とICTの統合が急速に進んでいます。
日本がワット・ビット連携を通じてアジア標準の策定に関与すれば、国際競争力の強化に直結します。

 

社会デザインの再構築へ

ワット・ビット連携は単なる電力政策ではなく、都市計画、防災、教育、医療など公共領域にまで広がる「社会OSのアップデート」です。
スマートシティ構想や脱炭素社会の実現と直結し、人々の暮らしを安全・快適・持続可能に変えていきます。

一方、急速な変化は、地域での環境保護とのバランスが保てない状態を引き起こす可能性があります。
十分な期間をかけたアセスメント、地域選定、環境保護とのバランスが必要となるのは言うまでもありません。

今後、なぜこのような構想が必要なのか。
AI時代におけるネット環境やエネルギーの在り方、送配電ネットワークとの兼ね合いなど、行政、民間、また地域社会との合意形成が重要なカギとなる、と考えています。

 

まとめ

「ワット・ビット連携」は、GX2040ビジョンやMESH構想を後押しし、エネルギーとデジタルを融合させた社会デザインを可能とします。

電力会社は再エネとデータセンターを一体的に整備し、需給調整サービスやデジタル基盤統合を通じて新たな事業モデルを確立することを戦略として据えていると考えられます。

上述したように、政治、官僚主体での構想が、日本国内において歓迎される趨勢として受け止められるかどうか、上記構想の結果、どのようなビジョンを達成できるのか、示していくことが必要であると考えます。

プライム・スター株式会社は、太陽光発電のEPC事業者として、また安全・安心な産業用蓄電池「レドックスフローバッテリー」のご提案を通じて、社会の趨勢に応えていくことを推進しています。

照明・制御・エネルギー・レジリエンスの4つの事業を軸に、エネルギーを「つくる・ためる・つかう・まもる」サイクルとして捉え、その流れ全体を支える統合ソリューションをご提供しています。

導入をご検討の方や、情報収集段階のご相談等も、どうぞお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

プライム・スター株式会社 代表取締役

下田知代

LED照明コンサルティングから製造へ進出、 現在はエネルギーをつくる・ためる・へらすの総合的なソリューションを提案中。 お客様の課題解決のため、実践的な情報をコラムにてお届けします。