つくる

ビルの太陽光発電はここまで進化!屋根・外壁・窓が発電する時代の最新事情

ビルの太陽光発電はここまで進化!屋根・外壁・窓が発電する時代の最新事情
目次

エネルギーを消費する建物から、エネルギーを創る建物へ

建物は「電気を使う存在」だった

これまで建物は、基本的にエネルギーを消費する存在でした。
オフィスビル、工場、商業施設、住宅。いずれも電力会社から電気を購入し、それを照明、空調、IT機器、給湯などに使います。

そのため、建物の省エネルギーの歴史は長く「いかにエネルギー消費を減らすか」という取り組みでした。

例えば

・LED照明への更新
・高効率空調
・断熱性能の向上
・人感センサーによる自動制御

といった技術です。

こうした改善によって建物のエネルギー消費は確実に減少してきました。
しかし現在、建物の役割は次の段階へと進みつつあります。

それは建物自体がエネルギーを創る存在になるという変化です。

 

屋根の太陽光発電が建物の役割を変えた

建物がエネルギーを創る技術として最も普及しているのが、屋根に設置する太陽光発電です。

太陽光発電協会(JPEA)によると、
住宅用太陽光発電では4kWの設備に約25〜40㎡程度の屋根面積が必要とされています。
これを単純換算すると、1㎡あたり約0.10〜0.16kWの設置が可能という計算になります。

例えば屋根面積が1,000㎡の建物であれば、理論上は100〜160kW程度の太陽光発電を設置する余地があります。

また、日本では太陽光発電の年間発電量は、一般的に1kWあたり年間約1,000kWhが目安とされています。
つまり、100〜150kWの設備であれば年間10万〜15万kWh程度の電力を発電できる計算になります。
これは、オフィスビルであれば共用部の電力や照明の一部を十分にまかなえる規模です。

ただし、実際の建物では屋根すべてを太陽光発電に使えるわけではありません。
空調設備、影、避難動線、保守スペース、方位条件などがあるため、実務では設置可能面積は屋根全体より小さくなります。
それでも、建物の屋根が電力を生み出すという事実は、建物の役割を大きく変えました。

 

都市の建物は屋根だけでは足りない

しかし都市部の建物では、屋根だけで十分な発電量を確保するのは難しい場合が多くあります。

理由は単純です。
床面積は増えても、屋根面積は増えないからです。

例えば高層ビルでは、延床面積は巨大でも屋根面積は限られています。
そのため、屋根だけでは建物の電力需要の一部しか賄えません。

そこで近年注目されているのが、建物の外皮全体を発電面にする技術です。

 

外壁や窓も発電する「BIPV」

この考え方はBIPV(Building Integrated Photovoltaics)と呼ばれています。

BIPVとは、太陽光パネルを後付けで設置するのではなく、建材そのものに発電機能を持たせる技術です。

例えば

・外壁パネル
・カーテンウォール
・庇
・手すり
・天窓

など、建物の外装部分がそのまま発電設備になります。

国際エネルギー機関(IEA)のBIPV研究では、すでに世界各国で建物の屋根だけでなく、外壁やファサードを使った発電事例が増えていることが報告されています。
欧州では特にこの分野が進んでおり、建築デザインと発電設備を一体化した建物が数多く建設されています。

 

ガラスが発電する時代

さらに注目されているのが、発電するガラスです。

従来、窓ガラスは採光のための建材でした。
しかし現在は、透明性を保ちながら発電する建築用ガラスの開発が進んでいます。

例えばオーストラリアの企業ClearVue Technologiesは、透明性を持つ太陽光発電ガラスを開発しています。
この技術では可視光透過率70%程度を維持しながら発電が可能とされています。
また次世代モデルでは、シンガポール国立大学の研究機関SERISによる検証により、50W/㎡を超える発電性能が報告されています。

これは通常の太陽光パネルほどの発電量ではありませんが、重要なのはこれまで発電できなかった窓が発電面になるという点です。
ビルでは窓の面積が非常に大きいため、ガラス発電の普及は建物の発電量を大きく押し上げる可能性があります。

 

日本でも次世代太陽電池の開発が進む

日本でも建物一体型発電の研究が進んでいます。

経済産業省は、次世代型太陽電池の普及に向けて、

2025年までに発電コスト20円/kWh
2030年までに14円/kWh

を目標に掲げています。

また、YKK APとパナソニックホールディングスは、ガラス型ペロブスカイト太陽電池を窓に組み込む実証を開始しています。

ペロブスカイト太陽電池は

・軽量
・薄型
・柔軟
・低コスト

という特徴を持ち、建材と一体化しやすい技術として注目されています。
将来は窓や外壁が自然に発電する建物が増えていく可能性があります。

 

建物はどこまで発電できるのか

では、建物はどこまで発電できるのでしょうか。

現時点で言えるのは、屋根だけなら一部自給、外壁や窓まで含めれば建物のエネルギーの大きな割合を創る可能性です。

ただし、太陽光発電には限界もあります。

・天候に左右される
・夜間は発電できない
・都市部では設置面積が限られる

そのため、発電だけで建物のエネルギーをすべて賄うのは簡単ではありません。

建物のエネルギーを本当に最適化するには、

発電だけでなく、エネルギーを回す仕組み

が必要です。

つまり

①エネルギーを減らす(省エネ)
②エネルギーを創る(太陽光など)
③エネルギーを貯める(蓄電池)
④エネルギーを制御する(エネルギー管理)

という仕組みです。

これらを組み合わせることで、建物は単なる消費設備ではなく、エネルギーを創り、貯め、最適に使うシステムになります。

 

建物は小さな発電所になる

これからの建物は電気を買う場所ではなく電気を創る場所になっていきます。

屋根の太陽光発電から始まったこの変化は、
やがて外壁へ、窓へ、建材へと広がっていくでしょう。

建物そのものがエネルギーシステムになる。
それがこれからの建築とエネルギーの姿です。

そしてその考え方こそが、エネルギーを「創り」「貯め」「制御する」という

エネルギーループ(Energy Loop)

の発想なのです。

 

この記事を書いた人

プライム・スター株式会社 代表取締役

下田知代

LED照明コンサルティングから製造へ進出、 現在はエネルギーをつくる・ためる・へらすの総合的なソリューションを提案中。 お客様の課題解決のため、実践的な情報をコラムにてお届けします。