爆増するデータセンター。電力問題などの必須課題と今後の展開について解説
爆増するデータセンター
デジタル化の急速な進展に伴い、世界中でデータセンター(DC)の需要が爆発的に増加しています。
クラウドサービス、IoT、5Gの普及により、膨大なデータを処理・保管するインフラとしてデータセンターは不可欠な存在になってきました。
特に日本でも、リモートワークの増加やeコマースの成長に伴い、データの使用量が飛躍的に増大しており、それに対応するためのDCの建設や拡張が加速しています。
総務省が公表した「令和6年版 情報通信白書」によると、日本においてもDC市場規模が4兆円以上に達すると見込まれています。
日本のデータセンターサービスの市場規模(売上高)は、2022年に2兆938億円であり、2027年に4兆1,862億円に達すると見込まれている
引用:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd218100.html
データセンターの課題
しかし、データセンターの増加に伴い、いくつかの重要な課題が浮上しています。
特に、膨大なエネルギー消費、土地やリソースの確保、環境への影響、そして運営コストが主要な懸念事項として挙げられます。
米国の大手IT企業は、データセンター用の電力を確保するため、次世代型原子力発電である「小型モジュール炉(SMR)」への投資や、原子力発電所の全発電量を直接供給を受ける企業も登場しました。
国際エネルギー機関(IEA)によると、「ChatGPT」への質問-応答に必要な消費電力は、Google検索の10倍に相当します。
IEAの試算では、世界のデータセンターの電力消費量は、2026年に22年比で2倍以上に増加するということです。
このように、大幅に増加する電力需要にどのように対応すべきか、データセンターニーズが大きく変化するなかで、カーボンニュートラル化との両立が重要なポイントとなっています。
下記では、データセンターの急速な拡大における課題について解説したいと思います。
1.膨大なエネルギー消費(電力問題)
データセンターは大量の電力を消費します。
サーバーやネットワーク機器を24時間稼働させるためには膨大な電力が必要であり、そのうえ、機器の熱を冷却するためのエアコン設備にも多くのエネルギーが使われます。これにより、データセンターは世界の総エネルギー消費の大部分を占めるようになっており、特に電力消費の多い地域では、電力供給への圧力も高まっています。
日本では、電力供給の安定性が重要な課題です。東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入が進められているものの、依然として化石燃料に依存する部分も多く、電力供給が逼迫することもあります。
さらに、近年の電気料金の高騰は、データセンター運営コストに大きな影響を及ぼしており、エネルギー効率の改善が求められています。
2.再生可能エネルギーの活用と省エネ技術の導入
データセンターの膨大な電力消費に対する解決策としても、再生可能エネルギー(再エネ)の活用はもはや必須といえるでしょう。
太陽光や風力、地熱などの再エネを活用し、再エネの地産地消や、分散型電源(地域ごとに発電する仕組み)を取り入れることで、地域の電力供給を安定化させ、電力網への負荷を軽減することもできます。さらに、そうした活用がカーボンニュートラルの実現に近づくことが期待されています。
省エネ技術の導入も重要です。たとえば、冷却システムの効率化や、最新のAI技術を使って電力消費を最適化する方法が考えられます。これらの技術によって、データセンターのエネルギー使用を抑えるだけでなく、長期的には運営コストの削減も見込まれます。
実際に、冷却技術の改善により、従来型のデータセンターよりも電力消費を大幅に抑えることに成功している企業もあります。
3.土地とインフラの確保
データセンターを建設するためには広大な土地が必要です。
特に、日本のように土地資源が限られている国では、適切な立地を確保することが大きな課題です。
さらに、電力やネットワークインフラの整備も必要であり、これらのリソースを確保するためには多額の初期投資が求められます。
都市部にデータセンターを建設する場合、地価が高いため建設コストが膨大になることがあります。また、地方に建設する場合は、電力供給やネットワーク接続のためのインフラ整備が必要となり、これもまたコストの増加要因となります。今後、地方の再生可能エネルギーを活用したデータセンターの分散配置など、新たなビジネスモデルが模索されています。
4.環境への影響
データセンターの急増に伴い、環境への影響も無視できない問題となっています。
大量の電力消費による温室効果ガスの排出や、データセンターが使用する冷却水の管理、設備の建設に伴う環境破壊などが懸念されています。
このため、データセンター運営企業は、より環境に配慮した運営方法を模索し、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った取り組みを行うことが求められています。
いくつかのデータセンターは、グリーンエネルギーの活用やエネルギー効率の向上に加え、施設の周囲に植樹を行ったり、環境負荷を最小限に抑えるための設計を取り入れるなど、積極的な環境対策を講じています。これにより、企業イメージの向上や社会的な責任を果たすことができるとともに、持続可能な社会づくりに貢献しています。
5.需要に応じたスケーラビリティの確保
データセンターの需要は今後も増加していくと予想されていますが、その需要の変動に柔軟に対応できるスケーラビリティが求められています。
需要のピーク時には大量のデータ処理能力が必要となりますが、逆に閑散期にはそれほどのリソースが不要になることもあります。
このため、柔軟にスケールアップ・ダウンが可能なデータセンターの設計が必要です。
クラウド技術の発展により、必要なときに必要なリソースだけを使用するオンデマンド型のデータセンターが普及してきています。
これにより、効率的なリソース管理が可能となり、コスト削減やエネルギー消費の抑制にもつながっています。
環境対応型データセンターへの具体的アプローチ
環境への影響を配慮した環境対応型データセンターへの具体的なアプローチを紹介します。
(1)日立製作所「再エネ電力提供オプションサービス」
日立製作所は、同社データセンターのハウジングサービスメニューとして、カーボンニュートラル化した電力を割り当てるサービスを開始しています。
具体的には、データセンター内で使用する顧客のIT機器と、空調等の設備への電力を再エネ由来電力で賄うとされていて、証明書も発行されるサービスです。
(2)NTTファシリティーズ「液冷方式サーバーによる消費電力削減」
NTTファシリティーズは、2030年をめどに、液冷方式サーバー設置を目指しています。
サーバー発熱量の65%を液冷により冷却し、空冷と組み合わせることにより、データセンター冷却用消費電力を約50%削減することが可能であると試算しているようです。
(3)大成建設「液浸冷却システム」
液浸冷却システムとは、大成建設、RSI、篠原電機三社が共同開発した国際の液浸冷却システムで、サーバーを丸ごと液体に浸して冷却するシステムです。
液浸櫓に特殊冷媒を満たし、サーバーから熱を奪った冷却水を循環ユニットで冷やして再供給する仕組みが実現されています。
(4)データセンター向けエネルギーマネジメントシステム
サーバー室やデータセンター、ビル内の温度、湿度、電流、電力等を監視する技術として、エネルギーマネジメントシステムがあります。
ラックや分電盤毎 に監視でき、IT機器や設備機器の電力消費量を個々に確認することができ、これにより、エネルギー効率の把握・分析も容易となり、省電力化の第一歩としてエネルギー消費の「見える化」を推進することが可能です。
※上記は各種IR資料、ニュースリリース、ホームページより引用、要約
まとめ
以上のように、データセンター建設は今後一層加速することが予想され、かつ、各種の課題に対し、様々な企業による解決策がもたらされることが想定されます。
プライム・スターでは、太陽光発電を主体とした再生可能エネルギーEPC業務、また、産業用蓄電池のご提案、さらには消費電力を極力抑制した照明の提供や制御により、グリーンデータセンターへのご支援が可能です。