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FIT制度が変わる?!太陽光発電買取価格の最新動向「初期投資支援スキーム」

FIT制度が変わる?!太陽光発電買取価格の最新動向「初期投資支援スキーム」
目次

経産省が太陽光発電設備の導入支援策を議論

経済産業省 資源エネルギー庁が2025年1月30日に開催した第102回「調達価格等算定委員会」において、太陽光発電設備の導入促進を目的とした新たな支援策について、議論されました。
本コラムでは、その内容を分かりやすく解説します。

 

支援スキームの背景

調達価格等算定委員会は、太陽光発電における買取価格を決定していくにあたり、有識者による議論や意見表明を行うための会合です。
1月30日に発表された内容は、「再エネの自立化」「初期投資支援スキーム」を中心に議論が進みました。

特に後者における支援スキームは、FIT、FIP導入が進んでいく中において、いくつかの課題を解決するために制度変更が必要となっていることについて、論点を集約し、事務局(政府)から提案されている内容となっています。

 

支援の具体的な仕組みと論点

(1) 投資回収期間の短縮

太陽光発電設備の導入を促進するため、「階段型の価格設定」または「支援期間の短縮」のいずれかのスキームが検討されています。

  • 階段型の価格設定
    時間とともに支援額を調整し、事業継続のインセンティブを高める
  • 支援期間の短縮
    FIT/FIP期間を短縮し、早期の投資回収を可能にする

 

投資回収期間の短縮によって、金融機関からの融資が難しくなる可能性や、卒FIT後の電力活用方法が課題として指摘されています。
そのため、制度として階段型の買取価格設定に向けたコンセンサス形成が進められています。

具体的には、事業用太陽光(屋根設置)では、支援期間を5年、支援価格を19円/kWh程度とする案です。

FIT/FIP制度について、導入から一定の時間が経過するなか、金融機関の融資姿勢が普及の速度を鈍化させている状況がみられる、と一部で指摘されています。
委員会では、投資やファイナンスのインセンティブが満たされるかどうか、それについても目配りする必要性があることから、このような議論が発生していることが考えられるでしょう。

 

(2) 自家消費の促進

太陽光発電を自家消費に向かわせるため、FIT/FIP価格を電気料金水準より低く設定することが提案されています。

しかし、

  • FIT/FIPの買い取り価格が高いと自家消費へのインセンティブが弱まる
  • 自家消費を促す一方で、売電を主体とする事業モデルの持続可能性が問われる

といったトレードオフの関係があるため、慎重な設計が求められます。
 

委員会では、「深夜料金に魅力を感じていた消費者が、昼間は売電、深夜にエコキュートを利用する、との行動が継続し、需給バランスの点で本末転倒だ」といった具体的な事例を挙げて懸念している委員の発言もありました。

 

(3) 国民負担の抑制

支援策が導入されると、再エネ賦課金による国民負担が増加する可能性があります。
そのため、新しい支援スキームは、従来の方法と比較して、事業性評価のための割引率を2%で設定するとし、国民負担が同等または小さくなるように設計されます。

 

(4)事業継続と適切な廃棄

適切な事業継続や設備の廃棄計画を確保することで、事業終了後のコスト負担を減らす取り組みも必要です。
FIT事業終了後、発電所が放置されてしまう懸念が指摘されています。

事故発生への懸念や景観の問題、廃棄パネル放置等の社会問題にもつながりかねません。これらの観点が、事業者審査への影響を及ぼすこととと考えられています。

 

PPAビジネスへの影響

太陽光発電導入手法として、「PPA(電力購入契約)」が一般化しつつあります。

新たな支援スキームが導入されることで、

  • FIT/FIPの価格変動によるPPAの収益構造の変化
  • 支援期間短縮による投資回収期間の見直し

 
などの可能性が指摘されています。その点からも、政府は事業者の予見性を確保するために、「階段型の価格設定」や「一定の猶予期間の設定」を検討している、との側面もあります。
また、太陽光発電業界団体はこれに対する要望書を提出しました。要望書の主な内容は以下の通りです。

  • 10kW以上の屋根設置区分:
    • 「初期投資支援スキーム」の導入を歓迎
    • 2025年度下半期からの開始に異存なし
  • 10kW未満の住宅用太陽光:
    • 4年間の買取期間終了後のFIT価格を「階段式の買取スキーム」とすることを希望
    • 住宅用PPAモデルの融資確保のため、10年間の買取期間が必要
    • 住宅オーナーの不安解消のため、買取価格の保証を求める
    • 新スキームの導入は2026年度からとすることを希望

 
これに対しある委員は
「本来は(FIT/FIPが)終結したあとに様々な創意工夫が生まれて然るべきなのに、情けない団体だ、と思われても仕方ない」と厳しい指摘をしています。

 

まとめ

「初期投資支援スキーム」は、太陽光発電の普及を加速するために重要な施策です。
投資回収期間の短縮や自家消費の促進を通じて、導入ハードルを下げる一方、国民負担を抑制するバランスの取れた政策設計が求められています。

また、PPAビジネスなどの既存の事業モデルへの影響も考慮し、慎重な制度設計が必要です。
さらに、事業の持続可能性を確保するために、適切な設備の廃棄・撤去計画も検討すべき課題として挙げられます。

今後、具体的な支援額や適用範囲が明確になり次第、さらなる議論が進むことが予想されます。
政府の政策動向を注視しながら、制度改定による種々の影響を見極めていくことが重要と考えています。

 

この記事を書いた人

プライム・スター株式会社 代表取締役

下田知代

LED照明コンサルティングから製造へ進出、 現在はエネルギーをつくる・ためる・へらすの総合的なソリューションを提案中。 お客様の課題解決のため、実践的な情報をコラムにてお届けします。