ためる

レアメタル不要?岩石を蓄電池にできる岩石蓄熱発電という試み

レアメタル不要?岩石を蓄電池にできる岩石蓄熱発電という試み
目次

岩石を蓄電池に

太陽光や風力発電は天候に左右されるため、発電したエネルギーを効率的に蓄える技術が求められています。そんな中、岩石を利用した新しい蓄電技術が注目を集めています。
この技術は、天然の岩石を「自然の蓄電池」として活用し、熱エネルギーを蓄えることを目的としたものです。
「自然の岩石が蓄電池に?!」初めて聞いた際には、そんなことができるのか、と驚いたことを記憶しています。
当コラムでは、日本の各企業が試みる岩石蓄電池についてご紹介をいたします。

 

岩石蓄熱技術とは

岩石蓄熱技術は、余剰な再生可能エネルギーを熱エネルギーに変換して岩石に蓄え、必要な時に熱エネルギーを取り出すことができる技術を指します。

具体的には、再生可能エネルギーで発生した電力を使用して岩石を加熱し、その熱を蓄積いたします。
加熱された岩石は、必要に応じて熱エネルギーを放出し、蒸気タービンを回して発電することを可能とします。
このプロセスは、従来の蓄電池と比較して、いくつかの利点があります。

 

岩石蓄熱技術の利点と特徴

  1. 長寿命
    従来のリチウムイオン電池は寿命が10〜15年とされますが、岩石は適切に管理すればほぼ永久に使用可能です。
    これは、岩石が自然素材であり、劣化しにくい特性を持つためです。
  2. コスト効率
    岩石を使用することで、リチウムやコバルトなどの希少金属を必要とせず、コストを大幅に削減できます。
    岩石蓄熱の技術関係者の中では、岩石蓄熱システムは一般的に蓄電池の半分程度のコストで済むとされています。
  3. 省スペース
    岩石は高く積み上げることができるため、同じ容量の蓄電池に比べて必要な敷地面積が4分の1以下で済み、。より効率的な設置環境が構築することができます。
  4. 環境への配慮
    また、地元で採取できるため、輸送コストや環境負荷への影響も見逃せません。リチウムイオン電池をはじめ、種々の蓄電池はその製造過程においてもCO2を排出しますが、
    この蓄電池は自然由来もので、かつ近隣地域からの採掘であれば、より環境負荷も低減されることにつながるでしょう。

 

実証実験と商用化

東芝エネルギーシステムズ株式会社と中部電力株式会社は、静岡県島田市において岩石蓄熱およびエネルギーマネジメント技術を用いたプラントの設置に合意しました。

国内初のメガワット級の岩石蓄熱設備を持ち、2026年度に技術実証試験を行う予定です。
島田工場内の電力を利用して電気ヒーターを稼働させ、その熱を岩石に蓄えるシステムが評価されます。

実現した場合、880世帯の1日の電気量を賄うことが可能です。

また、環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に採択されており、国の支援を受けて進められています。
2022年には、熱容量約500キロワット時の岩石蓄熱システムの試験設備が開発され、横浜事業所での実証試験を通じて、岩石蓄熱技術の熱特性データが取得されています。

海外では、ドイツ・シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー社が岩石を熱してエネルギーを蓄える施設を開発しています。
風力発電などで得た電力を使って岩石を600℃以上に加熱し、その熱を利用して発電する仕組みです。

発電効率は電気としてのみ使用する場合には約45%ですが、熱や蒸気として利用することで90%を超える効率を実現しています。

 

まとめ

岩石蓄熱技術は、エネルギーをつくり、ためるといった一連のエネルギーループにおいて、レアメタル採取の困難性や経済安保を維持するためのひとつの解決手段になることが期待されています。

長寿命、コスト効率、省スペース、環境への配慮といった多くの利点を持つこの技術は、政府が注力する蓄電池への政策的な投資が拡大しているなかにおいて、一定の注目を集めることでしょう。
実証実験を経て、実用化への道筋が見えてくるかどうか、注目です。

 

この記事を書いた人

プライム・スター株式会社 代表取締役

下田知代

LED照明コンサルティングから製造へ進出、 現在はエネルギーをつくる・ためる・へらすの総合的なソリューションを提案中。 お客様の課題解決のため、実践的な情報をコラムにてお届けします。