エネルギーマネジメントシステム(EMS)義務化の海外事例|ドイツEnEfG制度と今後の日本
ドイツ、エネルギーマネジメント義務化へ
2023年11月、ドイツ連邦議会は「エネルギー効率化法(Energieeffizienzgesetz=EnEfG)」を成立させました。
この法律は、気候変動対策の柱として、2030年までに一次エネルギー消費を2008年比で39.3%、最終エネルギー消費を同26.5%削減する目標を掲げています。
その実現に向け、企業にはエネルギーマネジメントシステム(以下、EMS)の導入が義務化されることになりました。
義務化の対象とスケジュール
EnEfGによるEMS義務化のポイントは以下の通りです。
- 年間最終エネルギー消費量が7.5GWh超の企業は、ISO50001またはEMAS(EU環境監査制度)に基づくEMSを2025年7月18日までに導入する義務があります。
- 年間最終エネルギー消費量が2.5~7.5GWhの企業は、EMSの導入までは求められませんが、省エネ措置を実施し、その内容を報告・公表することが義務づけられています。
この制度改正により、データセンターをはじめとした大規模エネルギー消費施設では、計画的かつ継続的な省エネ活動の遂行が不可欠となります。
データセンター特有の要件
EnEfGでは、特にデータセンターに厳格な規定が設けられています。
- EMS導入期限は他の対象企業と同様、2025年7月1日が期限
- 電力消費の詳細測定・記録義務が課され、さらに省エネや業務改善を継続的に推進する仕組みの構築を要求
- 第三者認証(サードパーティ検証)は、定格接続容量が1MW以上の大規模施設を中心に2026年1月1日以降義務化
- 廃熱再利用の義務化や、PUE(Power Usage Effectiveness)などの指標のエネルギー効率登録簿への報告・公表が定められており、運用の透明性が求められます。
こうした規制により、データセンター業界では単なる省エネ対応にとどまらず、企業間の競争力にも大きく影響を与える可能性があります。
EMSの定義
「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」とは、単なる省エネ施策の寄せ集めではなく、次のような要素を含む体系的な取り組みを意味します。
- 1.エネルギー使用状況の把握
- 計測機器を導入し、施設や設備単位での消費データを取得
- 電力、ガス、熱、水蒸気など多種エネルギーの使用量を可視化
- 2.エネルギー方針・目標の設定
- CO₂排出量削減目標
- エネルギーコスト削減目標
- 3.改善計画の策定と実行
- 老朽化設備の高効率機器への更新
- 運用改善(稼働時間短縮、負荷平準化など)
- 4.効果の監視と測定
- EMSソフトウェアによるリアルタイム監視
- KPI(Key Performance Indicator)管理
- 5.内部監査と継続的改善(PDCAサイクル)
- 定期的な内部監査
- 認証取得による第三者視点での改善支援
EMS義務化でビジネス機会が広がる企業例
今回のEnEfG施行により、ドイツ国内ではEMS関連ビジネスが大きく拡大する見通しです。
以下のような分野で企業にチャンスが生まれています。
① 計測・センサー機器メーカー
EMSの基盤は「見える化」です。
エネルギー使用量を正確に計測する機器への需要は急増しています。
例えば、EMSの基盤においては、以下のような企業/製品があります。
- Siemens AG
スマートメーターや産業用エネルギー管理システムを展開。EMSプラットフォームと連携したデータ収集が可能です。 - Schneider Electric
省エネ分析機器、分電盤統合計測などを強みとしています。
② EMSソフトウェア・プラットフォーム提供企業
EMS運用にはデータ管理・分析ソフトが欠かせません。
EMSソフトウェア企業としては以下のよう企業/製品が例として挙げられます。
- SAP SE
EMS対応モジュールをERPに統合し、企業全体のエネルギー管理を支援しています。 - Siemens(Desigo CC)
ビルマネジメントからエネルギー分析まで統合管理が可能です。
③ エネルギーコンサルティング会社
法令対応や運用改善支援を行うコンサル需要も拡大します。
コンサルティング会社や業界団体の例としては以下のような企業があります。
- DENEFF(ドイツエネルギー効率化イニシアチブ)
政策提言のほか、企業向けEMS導入支援を行っています。 - PwC Germany
EnEfG対応診断やISO50001認証支援サービスを展開。
④ 廃熱再利用・熱回収システム関連企業
廃熱利用義務化により、熱回収技術市場も活況です。
この分野では、例えば以下のような企業/製品があります。
- Viessmann
産業用熱回収装置を多数展開。 - Bosch Thermotechnology
ヒートポンプや廃熱回収システムで強みを持ちます。
これら企業はいずれも、EnEfGによるEMS義務化の波を新たなビジネスチャンスへと変えようとしています。
中小企業の対応は?
一方、中小企業にとっても今回の法改正は無縁ではありません。
2.5~7.5GWh消費の企業も、省エネ施策の実施報告が義務化されるため、一定の運用負担が生じます。
こうした企業には、以下のような対応が現実的です。
- 外部のEMSコンサル会社を活用
- クラウド型EMSツールで低コスト運用
- ISO50001の簡易版導入(スモールEMS)
中小企業は限られたリソースで法対応を迫られるため、外部サービスとの連携が成功の鍵となるでしょう。
ドイツEnEfGから学ぶエネルギー経営の未来
ドイツのEnEfGは、欧州全体のエネルギー効率化の流れを象徴する法改正です。
単なる法令遵守の枠を超え、企業経営においてもEMSの導入は次のような価値を生み出します。
- エネルギーコストの持続的削減
- CO₂排出量削減によるESG評価の向上
- 法規制リスクの回避
- ビジネスパートナーや顧客からの信頼獲得
日本国内におけるEMSの今後
日本においては、年間原油換算で1,500kL以上のエネルギーを使用する工場や事業場にて、エネルギー使用状況の報告、長期の合理化計画策定、計画未達成の場合の罰則等が定められています。
また、省エネ法の2023年改正により、デマンドレスポンス(DR)に関する報告義務も加えられました。
国内では、ドイツのようにEMS機器による可視化までの義務はないものの、欧州を参考とした義務化等が導入される可能性があります。
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