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次世代エネルギー運用の要となるBMSとは?SOCとの関係性についても解説します

次世代エネルギー運用の要となるBMSとは?SOCとの関係性についても解説します
目次

BMSとSOCの関係

電気自動車(EV)や蓄電システムの普及が拡大する中、BMSと、BMSによる管理要素であるSOCは、その安全性や機能を担う次世代エネルギー運用の要となります。

BMSとは、Battery Management System(バッテリーマネジメントシステム)の略であり、SOCとは、State of Charge の略でBMSによる管理要素である充電状態のことです。

本コラムでは、BMSとSOCの役割とその関係について、特にレドックスフロー電池を軸にわかりやすく解説します。

 

SOC(State of Charge)とは?

SOC(State of Charge)とは、バッテリーの残容量を百分率(%)で表した指標です。
100%は満充電、0%は完全放電の状態を示し、EVや蓄電池では、このSOCがエネルギーの残量を把握し、充電計画を立てる基準として活用されます。

しかし、SOCの測定は単純ではありません。
なぜなら、バッテリーの劣化や温度、負荷が影響するためです。そのため、リアルタイムでいかにエネルギーの残量を正確に測定できるがエネルギー運用のカギとなります。

 

BMS(バッテリーマネジメントシステム)とは?

BMSは、バッテリーの安全性と性能を最適化するための管理システムです。
以下のような機能を持ち、バッテリーの状態を監視します。

  • SOCの計測:電圧・電流・温度をモニタリングし、充電状態(SOC)を算出。
  • SOH(State of Health:劣化状態)の管理:バッテリーの劣化を評価し、交換時期を予測。
  • 安全管理:過充電・過放電や温度上昇を防ぎ、安全な運用を確保。
  • バランス調整:セルごとの電圧を調整し、バッテリー全体の均一な性能を維持。

BMSとSOCの関係:精密な充電管理を実現する

BMSがリアルタイムでバッテリーの状態をモニタリングすることにより、SOCの正確な測定を可能とします。
また、BMSはSOCの変動を解析し、充電・放電の最適なタイミングを判断します。

たとえば、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用したEVの充電機器では、SOCが80%を超えると充電速度が遅くなる設計になっています。
BMSはこのプロセスを管理し、バッテリーへの負荷を最小限に抑えつつ、充電を効率化します。
これにより、安全性を保ち、バッテリー寿命を長期化することを目的としています。

 

レドックスフロー電池におけるBMSとSOC

レドックスフロー電池は、電解液の酸化還元反応を利用した蓄電池であり、再生可能エネルギーの蓄電に適しています。
BMSによる各種パラメーター管理は、この電池の特性を最大限に活かすためにも、必要不可欠な重要事項です。
BMS運用について簡単にまとめると、以下のようになります。

  • SOCの正確な測定:電解液の濃度や電位をリアルタイムで計測し、SOCを把握。
  • BMSによる自動制御:電力需要に応じて充電・放電を自動化し、エネルギー供給の最適化を実現。
  • 完全放電・充電への対応:レドックスフロー電池は、完全充電や放電が可能で、BMSにより安全なプロセスで管理を実施。

 

 

BMSとSOCの課題とAIへの期待

BMSとSOCの管理は、正確な測定と安全性確保が課題です。
特にEVでは、温度や走行条件がバッテリーに与える影響を考慮する必要があり、SOCの計算には誤差が生じることがあるため、BMSがデータの精度を向上させる役割を担います。

今後、AIや機械学習を活用したBMSが普及することで、SOCの予測精度が向上し、エネルギー効率がさらに高まると期待されています。

 

エネルギーシステムの最適化

BMSによる管理は、再生可能エネルギーの普及においても重要な役割を果たします。たとえば、V2G(Vehicle-to-Grid)のような技術を活用し、EVのバッテリーから電力網に電力を供給する場合、BMSがSOCを管理し、電力の出し入れを最適化します。

また、BMSは家庭用のエネルギー管理システム(EMS)と連携することで、電力の需給バランスを調整し、電力コストを削減する役割を担います。
例えば、住宅の屋根やカーポート等での太陽光発電、家庭用蓄電池、EVへの充放電、家庭内電気機器との連携、更には系統用電力との関係性等、何か不具合があれば生活に支障をきたしかねない複雑な電力の需給関係を管理し、安全、適切にコントロールし、更にはエネルギー全体を効率化する機能を担うということになります。

そのため、安全性や信頼性は、今後、家庭や一般企業に再エネ、蓄電池が普及する過程において、大変重要視されるポイントとなるのは間違いありません。

 

まとめ

BMSとSOCは、EVや蓄電システムの運用効率を向上させ、持続可能なエネルギー社会を支える重要な技術です。
BMSがSOCを正確に管理することで、バッテリーの寿命を延ばし、安全で効率的な運用が可能になります。

リチウムイオンバッテリーにおけるBMSは、燃焼に弱い特性から温度や過充電保護に重きを置いていることに対し、水溶液ベースのレドックスフロー電池は上記のような懸念が無いことから、電解液濃度や、バナジウムの電荷計測によるSOC等各種要素を管理しています。

また、リチウムイオンバッテリーは、充放電サイクルが嵩むことによるバッテリーの劣化が懸念されていることから、BMSの応答速度も上記を意識した設計になっていますが、レドックスフロー電池では、そのような懸念は不要です。

そのため、イニシャルコスト以外においても「充放電ロスをいかに細かく管理していくかの技術競争」となり、特性上、電池劣化を最大限に緩和することが求められるリチウムイオンバッテリーとレドックスフローバッテリーを比較すると、後者の特性による差別化が期待されるところです。

プライム・スターでは、産業用蓄電池において、様々な電池について、お客様のご要望に応じたご提案が可能です。
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この記事を書いた人

プライム・スター株式会社 代表取締役

下田知代

LED照明コンサルティングから製造へ進出、 現在はエネルギーをつくる・ためる・へらすの総合的なソリューションを提案中。 お客様の課題解決のため、実践的な情報をコラムにてお届けします。