急成長する「蓄電所」ビジネスとは?基本構成やビジネスモデルについて解説します。
はじめに
近年、再生可能エネルギーの普及が進む中で、蓄電所ビジネスが注目を集めています。
特に日本では、エネルギー政策の転換や技術革新により、産業用蓄電池の市場が急速に成長しています。
そこで今回のコラムでは、産業用蓄電池を活用した蓄電所ビジネスについて、基本構成や収益モデル、市場動向等をわかりやすく解説していきたいと思います。
蓄電所ビジネスの基本構成
発電者、また蓄電所運営者は、複数の取引市場に参加することが認められており、これにより多様な収益源を確保することが可能です。
例えば、卸電力市場や需給調整市場、容量市場などがあり、それぞれの市場で異なる価値(kW価値、ΔkW価値、kWh価値)を取引します。
また、小規模な蓄電所においてもVPP(Virtual Power Plant)アグリゲーターを活用することで市場に参入することができるため、小規模事業者でも大規模な市場取引が可能となり、収益を上げるチャンスが広がっています。
蓄電所ビジネスモデルの多様性
蓄電所ビジネスには様々なモデルがあります。
例えば、大型の系統用蓄電池を用いるもの、アグリゲーションを行うもの、市場収入を中心とするもの、長期脱炭素電源オークションからの固定収入を中心とするものが挙げられます。
これら蓄電所ビジネスのモデルを選定する際には、自社のリスク・リターン・プロファイルや他ビジネスとの協調を考慮することが重要です。
さらに、各市場の将来価格を分析し、長期にわたる収益予測を行う必要があります。
プロジェクト期間が15~20年程度であるため、各市場の価格変動を予測し、それに基づいて収益を最適化することが求められます。
蓄電所ビジネスの市場戦略と収益性
蓄電所ビジネスにおける主要な収益戦略には、アビトラージ、需給調整市場、容量市場があります。
- アビトラージ:アビトラージとは、電力価格が低い時に電力を蓄え、価格が高い時に放電して売ることで利益を得る方法です。異なる市場間での電力売買を行うことも含まれます。
- 需給調整市場:需給調整市場とは、電力の需要と供給のバランスを保つため、蓄電池を用いてリアルタイムで電力供給を調整し、報酬を得る市場です。電力需要が高い時に蓄電池から電力を供給し、需要が低い時に充電することで、電力会社やグリッド運営者から報酬を得る方法を指します。
- 容量市場:容量市場とは、長期的な電力供給能力を提供し、電力供給の安定性を確保するために報酬を得る市場です。長期的な電力供給能力を提供し、グリッドの安定性を確保するために重要な要素となります。蓄電池が電力供給能力の一部として認識され、グリッド運営者から支払いを受けることが可能です。
これらの市場戦略により、蓄電所は多様な収益源を確保し、電力グリッドの安定化に貢献します。
投資収益率と市場動向
蓄電所市場は急速に成長しています。
急成長にはさまざまな要因が考えられますが、リチウムイオン電池の価格が2010年以来90%減少したことも急拡大の背景にあります。
リチウムイオン電池の低価格化による導入コスト低下で、商業および産業セグメントではエネルギーコストを最大80%削減できる可能性があります。
さらに、プライベートエクイティの投資も活発で、グローバルでの統計によると、2023年には合計約52億ドルがバッテリーストレージ企業に投資されました。
このような企業への投資額増加も、蓄電所ビジネスの将来性を示しています。
日本市場の展望
BloombergNEFの調査によれば、日本のエネルギー貯蔵市場は、2030年までに約5,110億円にまで成長する可能性があると指摘されています。
このように蓄電所ビジネスは、高い投資収益率(IRR)を提供する魅力的な投資先ですが、地域、プロジェクトのスケール、使用する技術によって具体的なROIは異なるため、詳細な市場調査と個別のプロジェクト評価が重要です。
まとめ
蓄電所ビジネスは、多様な収益モデルと市場戦略を駆使して、再生可能エネルギーの普及を支え、電力グリッドの安定化に貢献しています。
日本においても、この市場は急速に成長しており、今後ますます注目を集めることでしょう。投資家や事業者にとって、この分野は高い成長性と収益性を持つ魅力的なビジネスチャンスとなっています。
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