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リチウムイオン電池はなぜ発火するのか?原因と対策を解説します。

リチウムイオン電池はなぜ発火するのか?原因と対策を解説します。
目次

リチウムイオンバッテリー火災のリスクと対策

はじめに

再生可能エネルギーを有効的に使用するには、「蓄電」を行い、ピークシフトやBCP対策、市場への売電等を組み合わせた運営が欠かせません。そのため、発電所ならぬ蓄電所の建設や、長期脱炭素オークションにおける蓄電池入札など、蓄電池は大変注目を集めています。

しかしながら、昨今、世界中でリチウムイオンバッテリー由来の痛ましい大規模事故が発生しており、犠牲者も報告されています。製造場所における事故のみならず、設置場所でも火災が発生していることを考えると、脚光を浴びる脱炭素市場における影のひとつと言っても過言ではありません。

本コラムでは、リチウムイオンバッテリーがなぜ発火するのか、事故を防ぐためにどうすればよいのかを考察します。

リチウムイオンバッテリーはなぜ燃えるのか

産業用の大型リチウムイオンバッテリーは、リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LiFePO4バッテリー)を組み上げて構成しているものが多数です。これは他のリチウムイオンバッテリーに比べて安全性が高いとされていますが、それでも火災が発生する可能性はあります。
以下に、リチウムイオンバッテリーの主要な火災原因を簡単にまとめます。

  1. ショート(短絡)
    正極と負極の間でショートが発生すると、大量の電流が流れ、局所的に発熱します。これにより、内部の電解液が反応し発火する可能性があります。
  2. 過充電
    過充電状態になると、バッテリー内の化学反応が制御不能となり、発熱・発火するリスクが高まります。
  3. 過放電
    過放電状態になると、負極の集電体である銅が溶け出し、デンドライト(針状結晶)が形成されます。このデンドライトがショートを引き起こし、火災の原因となることがあります。
  4. 外部からの衝撃や損傷
    バッテリーに強い衝撃が加わったり、物理的に損傷を受けたりすると、内部の構造が崩れ、ショートや発火の原因となります。
  5. 製造不良
    製造過程での不良や材料の欠陥があると、内部でのショートが発生しやすくなり、火災リスクが高まります。品質管理が重要です。

発火対策

リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの火災リスクを低減するため、以下の対策が講じられています。

  • 過充電防止回路: バッテリーが過充電されないための措置
  • 高品質の材料使用: デンドライトの発生を防ぐため、純度の高い材料を使用
  • 堅牢な設計: 外部からの衝撃や損傷に強い設計
  • 高度な製造プロセス: 製造過程での不良を最小限に抑制

EV用バッテリーの規制と試験

電気自動車(EV)に使用されるリチウムイオンバッテリーについては、各国で厳格な規制が設けられています。
例えば、アメリカの国家交通安全局(NHTSA)は、バッテリーの耐火性や耐衝撃性に関する基準を設定しています。具体的には、以下のような試験が実施されています。

  • 耐火試験: バッテリーが外部からの火災にどれだけ耐えられるかを評価します。バッテリーは高温の炎にさらされ、その耐火性が測定されます。
  • 耐衝撃試験: バッテリーが物理的な衝撃に対してどれだけ耐えられるかを評価します。衝撃を与えた後にバッテリーの状態を確認し、発火や爆発のリスクがないかを検証します。
  • 過充電試験: バッテリーを意図的に過充電し、その反応を観察します。過充電による膨張や発熱、発火などのリスクを評価します。
  • 短絡試験: バッテリー内部で短絡が発生した際の挙動を確認します。短絡による発熱や発火のリスクを検証します。

EUでも同様に、バッテリーの安全性を確保するための法規制が強化されています。これにより、バッテリーメーカーは高い安全基準を満たすための技術開発を進めています。特に、バッテリーの材料選定や製造プロセスの管理、品質管理システムの強化が求められています。

火災実験の事例

バッテリーメーカーは、自社のリチウムイオンバッテリーがどの程度の過酷な条件に耐えられるかを確認するための火災実験を行っています。この実験では、バッテリーを高温にさらし、その後に強い衝撃を与えることで、発火のリスクを評価しました。

さらに、過充電や深放電の条件下でのバッテリーの挙動も詳しく調査されました。その結果、バッテリーの安全性を確認し、改善点を見つけ出すことができました。このような実験結果を元に、バッテリーメーカーはさらに安全性を高めるための改良を続けています。

安全面を考慮した蓄電所建設を

リチウムイオンバッテリーメーカーは当然ながら上記のリスクを十分に承知しており、安全性には十分に留意するとともに、次世代型蓄電池(全固体電池)の開発が急ピッチで進められています。
しかしながら、それらはEV用途が中心です。

経済的合理性が問われる再エネ関係にて使用される蓄電池に対し、機能・保証条件を満たせば、最終的には価格の要素が判断において重要となります。

しかし、そもそもSDGs、カーボンニュートラルといった理念のための施策であることを考慮すれば、長期に渡り安全に使用できる、事故の可能性を十分に検討したうえで、総合的なリスクリターンを考えていく必要があります。

運営者は、相次ぐ火災事故について、それこそ「対岸の火事」とせず、安全対策が十分に施された蓄電池を選択すべきであると考えます。

水溶液ベースで燃えない「レドックスフローバッテリー」

上記で述べた通り、リチウムイオンバッテリーの火災原因は、電解液への物理的負荷に起因するものです。プライム・スターのレドックスフローバッテリー「BIG-HUG」は、電解液が水溶液であり、リチウムイオンバッテリーとは全く異なる構造です。

プライム・スターでは、埼玉工業大学の松浦研究室とのコラボレーションにより、レドックスフローバッテリーに関するセミナーを随時開催しています。
どうぞお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

プライム・スター株式会社 代表取締役

下田知代

LED照明コンサルティングから製造へ進出、 現在はエネルギーをつくる・ためる・へらすの総合的なソリューションを提案中。 お客様の課題解決のため、実践的な情報をコラムにてお届けします。